福岡県平尾台自然観察センターと平尾台でのケイビングについて

福岡県平尾台自然観察センターは,2000年5月19日に、環境庁の補助を受け、
福岡県と北九州市が協力、エコミュージアムとしてオープンしました。
(同時期に秋吉台エコ・ミュージアム=山口県美東町が開館)
開館時間9〜17時、入場無料、月曜休館日

 日本有数のカルスト台地平尾台において、自然保護の拠点施設として、
多くの人々に自然の仕組みや自然公園利用のマナーを学ぶ機会を提供し、
自然を愛する心を育むという目的で開設されました。

 活動の柱は
・センターやフィールドの案内、イベント情報の提供
・展示・指導員の解説によって、自然や生態を理解し、自然に対するマナーを
学ぶ
・公園利用者、ボランティアの交流の場とする
・自然を守るための保護監視活動の拠点とする
・休息、悪天候時の避難場所や急病傷人の救護の場とする
となっており、年間約7万人の方々が利用しています。

 当施設は、フィールド付きミュージアムということが特徴です。平尾台に
来たら、先ずセンターに立ち寄って、日々新しい平尾台の自然情報を得て、
フィールドに飛び出そうというコンセプトで展示されています。ハイビジョン
シアターは、「平尾台四季の詩」と「平尾台の不思議」を30分毎に上映して
います。また平尾台のカルスト地形の成り立ち・散策コース・動植物の生態・
石灰石鉱業などを、ジオラマや模型、パソコンゲームを使って解りやすく展示
しています。

 また季節毎にいろいろな自然観察イベントを実施しており、青龍窟・不動洞・
目白洞などで行うケイビング教室も大人気です。
(詳細はhttp://www.hiraodai.jp)
  この夏休みには、平尾台ミステリーツアーと称して、ジャイアントカレンが
複雑に発達したポイントや、樹林に覆われたピナクル群、カルスト縁辺地の
断崖絶壁、ほとんど人が訪れない無名の鍾乳洞などを訪ね歩き、大変好評を
得ました。他にも地元小学校の総合学習の一環として、ケイビングを実施した
りしています。

 平尾台は全国でも有数のケイビングのメッカであり、一年を通じて多くの
ケイバーが訪れています。また昨年、福岡県苅田町で洞窟学会があり、観光化
されていない洞窟に入る人々が増加しています。そこで困った問題が起こって
います。

その0) ゴミの放置
 当たり前のことですが、ゴミやそのほか人の持ち込んだものを、洞内に残さ
ないことは基本中の基本。一番よく見かけるのは、使い古した乾電池です。
必ず持ち帰りましょう。錆びに包まれ、内部から電解液が浸みだしたものが
よく落ちています。強烈な酸や水銀が含まれているので鍾乳石や水質を悪化
させます。

その1) 荷造りテープの散乱
 たぶん、ケイバーだったら絶対こういうことはしないハズですが、洞内で
迷わないように目印の樹脂テープを伸ばして入洞し、それをそのまま放置して
しまうということです。特に青龍窟に多く、青・赤・黄色様々な色のテープが
ゴミとして引っかかっています。目に留まるたび片づけていますが、後を絶た
ない状態です。

その2) スプレーペンキ
 これも絶対してはならないこと。テープではなく、カラースプレーペンキで
目印を付けてしまう人達がいるのです。石灰岩に落書きをすると、地表でも
なかなか消えません。ましてや地下では紫外線による色の退行もないので、
半永久的に残ってしまいます。

その3) 石灰岩や二次生成物を刻むこと
 経路や目印、また入洞の記念に、洞壁に刻みつけられた名前や日付を目に
します。これは大学や探検グループに多い傾向です。他に名を残す方法を知ら
ない下等な考えで、軟らかい石灰岩や鍾乳石に自分の名前を彫り込んでしまっ
たのでしょう。おまけにサークルや学校の名前まで不名誉の道連れにしている
ことになります。

以下は不用意にしてしまうことです。

その4) 鋲靴を履いての入洞
 最近、釣り用品や山岳用品で、やすくスパイクのついた靴や長靴が入手でき
ますが、洞内では絶対これを使わないようにしてください。石灰岩は軟らかく、
傷つきやすいのです。その傷は長い間、見苦しい跡として残ります。

その5) 用便
 入洞するまえに体調を整えておけば、ある程度避けられることです。もし
生理現象が襲ってきたら、携行した袋にして持ち帰りましょう。最低限、
流水に溶かして流して下さい。洞内は降雨や微生物など排泄物分解がされない
ため、そのまま残されているのをしばしば見かけます。

その6) 二次生成物(鍾乳石)や溶食地形に触れたり破損する
 うっかり天井から下がっているストローやペンダントにヘルメットをぶつけ
てしまった人は、少なからずいると思います。折れなくても表面の突起が壊れ
て、欠けてしまったり、何百・何千年も掛かった自然の造形を、一瞬に台無し
にしてしまったことになります。わざと壊したり持ち帰ったりするのは問題外。
 そして、手でそっと触ることも、してはならないことです。壊さないから
良い・・・のではなく、触れることで人が運んだ泥や微生物が表面に付着し、
変色・変質してしまうのです。
 また二次生成物や溶食地形だけでなく,壁面や天井の岩,床の粘土や砂の
堆積物にも,できるだけ触れないようにしてください.このようななにげない
場所にも,洞窟が形成されてきた長い歴史や地表の環境変遷を解読する証拠が
残されているのです.洞窟の中を自然のままにしておくことを心掛けてくだ
さい。

その7) 人為的な造形物を作る
 泥筍や砂筍、マッドカップの見事なものを見ると、創作意欲をかき立てられ
マネしたくなる気持ちは分かりますが、そこをグッとこらえて下さい。中には
埴輪人形を作って展示していく、脳天気な迷惑者もいるようです。


 平尾台全体は北九州国定公園・筑豊県立自然公園・天然記念物などに指定
され、自然公園法・文化財保護法で厳しく規制されています。

<自然公園法>
・工作物を作る
・木・竹の伐採
・鉱物・土石を掘ったり採取すること
・水位を変える
・汚水や排水の排出
・看板設置・広告表示
・水面埋め立て・干拓
・開墾・土地形状の変更
・一切の植物採取・損傷、落葉・落枝採取
・施設の色変更
・道路以外での車・馬・動力船の使用
・屋外での物集積
・火入れ・たき火
・木竹の損傷
・木竹の植栽
・家畜・動物の放牧
・動物捕獲・損傷、卵採取・損傷

<軽犯罪法>
・ゴミ、汚物、廃物を捨てたり放置すること
・悪臭発散・拡声器・ラジオによる騒音発生
・展望所・休憩所の占拠
・用便
・嫌悪感を起こさせる客引き
・その他利用者に迷惑を掛ける行為

<文化財保護法>
・石灰岩の掘削・採取
・地形改変
・上記景観などに影響を及ぼす行為

 このさまざまなルールの中で、ケイバーが犯しやすい違反は、キャンプです。
キャンプには火気の使用、草木などを損傷したり広場の占拠、車の乗り入れ、
他の公園利用者への迷惑行為などに問題があり、基本的に国定公園の特別保護
地区ではキャンプは出来ません。可能な所は特別保護地区から外れている、
牡鹿洞の駐車場だけです。(将来的には北九州市が県道の西側に平尾台自然の
郷の一部に整備中です。)
 なお平尾台公民館は、一般でも宿泊に利用することができます。有料ですが、
炊事場も付いており、天候面から考えると一番安心でお勧めです。但し事前の
申し込みが必要(電話:093-452-2604).
 平尾台は多くの住民の生活の場です。夜間に花火をしたり、カラオケや
嬌声をあげて騒いだり、カーステレオをならしたり車で走ったり、乱暴な
ドアの開け閉めなどで、迷惑が掛からないようにおねがいします。

 また新しい洞窟探査などのために、入口を拡げたり、水の流れを変更する
ことは禁止されています。当然石灰岩や二次生成物を採取することも厳く禁止
されています。


入洞の届出について

 平尾台の洞窟に入る場合、出来るだけ平尾台自然観察センターに事前に
届出をお願いします。定型様式はありませんが、

名称など(代表者氏名、年齢、性別、住所、同電話番号、留守連絡先住所、
同電話番号)
メンバー全員の(氏名・年齢・性別・住所・留守連絡先、同電話番号)
行動計画(入洞洞窟名、支洞名、位置、日付、時間、装備)
連絡関係先(警察・消防・その他)

を明記して下さい。平尾台での活動が終わったら、必ずセンターに帰還の
報告をお願いします。長期に渡る場合は、中間で報告を頂いた方が良いと
思います。

 入洞の届出があったもので、予定を過ぎて帰還の報告が無い場合、
ボランティア、消防、地元ケイビングクラブに依頼して捜索することになり
ます。なお平尾台では携帯電話は使用圏外なので、緊急の連絡は日中であれば
目白洞管理事務所、千佛洞管理事務所、前田商店に公衆電話があります。
(夜間は前田商店のみ)

 さて、事故が起こった場合、その旨を洞窟管理事務所か自然観察センター、
もしくは巡視パトロールに連絡してください。地域ケイバー・ボランティア・
消防・警察へ連絡します。夜間の場合は、届出の際にお渡しする連絡網を参考
にして下さい。北九州市消防局のレスキュー隊は、雷神洞での救助事例、
目白洞などへの入洞経験があります。また自衛隊芦屋航空隊は目白洞や広谷で
毎年訓練を行っています。

 平尾台の代表的な鍾乳洞は、入口の部分が観光化されています。目白・
千佛・牡鹿洞は、必ず管理者に入洞の許可を得て下さい。特に目白洞は、概ね
4時間の所要時間がかかるので、朝早い時間から行動すると良いでしょう。
出洞が遅くなると管理人さんに迷惑を掛けます。
 一般の観光客は、ケイバーの全身泥だらけ、ずぶぬれの異様な姿を見ると
驚きます。観光洞内で出会ったりすれ違うとき、衣服を汚したり、驚かせたり
しないよう注意して下さい。

 一般の方はもちろんケイバーにも、入洞を自粛していただきたい箇所が
3つあります。

その一つは青龍窟のナウマン支洞。
 ここは化石などの調査がまだ終わっていないため、苅田町で関係者以外の
立ち入りを禁止しています。

二つ目は、水源地の穴。
 ここは地域の水源となっているので、汚染しないよう一切入洞禁止です。

三つ目は、芳ヶ谷第三洞です。
 ここは特別に保護が必要な箇所です。入洞は自粛してください。

 初めて平尾台にケイビングに来られる場合、平尾台自然観察センターに
事前に連絡して、ご相談下さい。(担当:久下 kuge@hiraodai.co.jp
平尾台をフィールドとする「カマネコ探検隊」など、ケイビングのベテランの
方々や地域とのネットワークもありますので、必要に応じてご紹介いたします。

 またこれはお願いですが、平尾台の地質・カルスト・洞窟などについて、
資料をお持ちの方は、福岡県平尾台自然観察センターへの資料提供をお願い
します。既に地域の洞窟研究家の方々から貴重な文献などを頂いて展示して
います。センターは公園利用者・ボランティア・研究者などの交流の場に
なっています。親睦や情報交換の場として、お気軽にご利用下さい。

 ケイバーの皆さんの平尾台でのいろいろな発見と感動、訪れる人々との
出会いがもらたす、ケイビングライフの充実を願っています。

【連絡先等】
福岡県平尾台自然観察自然観察センター
〒803−0186北九州市小倉南区平尾台1−4−40
電話093-453-3737 ファクス093-452-3739
電子メール アドレス :  hiraodai@cronos.ocn.ne.jp
ホムページ: http://www.hiraodai.jp

文責:自然観察指導員 久下洋一

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