カマネコの夜明け 〜結成秘話〜

「ケイビング・クラブを作らん?」
84年4月、平尾台からケイビングの帰り道、浦田がなにげなく言った。
飛鷹はその時は聞き流していたが、何故か後日、急にその気になった。

その気になると早い。男二人じゃウワサが怖いと言うので、お友達のナカ、ヒヨコを誘い、4人で一気に発会式を焼鳥屋(*1)でやってしまった。
しかし、発足はしたものの、クラブ名も決まらず(*2)、とりあえず『若戸ケイビング・クラブ(*3)』と名乗り、男二人でゴソゴソと活動(*4)しているだけであった。

初夏、『初心者のための洞窟探検(*5)』を開催しなければならない!
クラブのデビュー企画となるこの企画。何かカッコイイ名前はないか?
毎晩、眠れぬ夜が続き、浦田は痩せ、飛鷹はやみくもにハラが出ていった。

ところで、浦田と飛鷹は猫好きで、飛鷹の会社には五匹、浦田の家の近所にも三匹位猫がいた(*6)。(伏線である。)

ある夜(*7)、いつもの様に浦田の部屋で、ヒタイつき合わせて話をしている時、山岳クラブ(*8)の名に話がうつった。『カモシカ同人』この名からカマネコ(*9)が出てくるまでに、数十分とかからなかった。飛鷹が『カマネコ・ケイビング・クラブ』と叫ぶと、浦田が『カマネコ探検隊!!(*10)』 「ワハハ、それはイイ」「ワハハハ・・」「ワハ、ワハ」

男二人の笑い声の響く日本間の部屋の中、
正にカマネコ探検隊が、輝ける栄光の中へその泥足をふみ出した瞬間であった。
1984.9 飛鷹和久
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*1 : 若松「安兵衛」。シシトウのベ−コン巻、サイコー!
*2 : 飛鷹は、幼少の頃より名前をつけるのが苦手だった。浦田においては、なにおかいわん や!!(浦田は84年に平尾台で20本ほどの新洞を見つけているが、そのほとんどが「名前 をつけるのがメンドー」なために、未発表になっている。)
*3 : 飛鷹が若松、浦田が戸畑のそれぞれ洞海湾の向かいに住んでいる。
*4 : この頃、浦田は卒論の関係もあり、毎日の様に平尾台へ足を運んでいた。洞窟に入るの でなく台上調査が目的で、若草おいしげる頃、大変な苦労であったであろう。
同時期、平尾台で山火事多発。
*5 : 83年7月3日。九大探検部(浦田)とCAMP-2(飛鷹)で第1回を行う。(青龍窟)
*6 : 近所に猫がいても、何も関係ないのだが・・。現在、両家とも一匹ずついる。
浦田家は、シロブチで『良夫(ヨシオ)』飛鷹家のは、キジで『マン太郎』という。
*7 : 84年6月20日、水曜日である。
*8 : 飛鷹は、登山もするのだが、丁度この時「山岳遭難」を書いた本を読んでいた。
*9 : 宮沢賢治著、『猫の事務所』の主人公。この話は二人とも知っており、カワイソーでものす ごくイイと、以前話したことがあった。
*10: 山上たつひこの名作に『はずかし探検隊』というのがある。また、二人は60年代ポップス のファンであるが、この頃イギリスのグループで動物の名をグループ名にするのが流行って いた。尚、探検隊としたのはケイビング以外の活動もやるからである。
※カマネコは、寒がりでカマの中に入って寝るため、体がススで汚れてまっ黒なネコの事で、決してオカマのネコでも、カメネコでも、カマボコでもありません。
体が汚れているため、他のネコからイジワルされたりする訳ですが、何となく我々ケイバーに似ていると思いませんか? [kazz]


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